椅子

 椅子をメインに制作しています。

広義に椅子と言いますが、軽作業用椅子、安楽椅子、長椅子、カウチ(寝椅子)、ロッキングチェア(揺り椅子)、飾り椅子等、用途に応じて様々な形があります。長時間座ることが想定される椅子は特にのちに痛み、疲れを引起し難いように身体に触れる部分が点ではなく面で支える、触れるように座面の掘りや背骨のS字を保持するような設計をしています。

 当工房ではオーダーメイドを引き受けます。体格も個人差がありますので機会があるなら、実際に座ってみて少し低くして欲しいとか横幅がもう少しあったほうが良いとか確認されるとより快適な椅子になるかと思います。

 また本当に優れた椅子には身体的な快適性に加えて室内空間において彫刻のような心理的な快適性も存在します。

温かみのある素材である木、デザイン的に曲面を多く用いることによってその木目をより美しく引き出して温かくて優雅な室内空間に仕上げます。

素材ー木材

水目桜、樺、ハードメープル、ブラックチェリーを主に使用しています。
樹種によって強度や比重は異なり、また表情も優しさ、力強さ、豪華さなど様々な印象を与えます。作品として表現したいイメージにより樹種を選別します。木材は正しく品質管理されていないとのちに割れ、反り、捻じれ等により木製品として支障をきたします。また製作過程で適材適所が正しく行われないと強度が落ちて壊れたり不具合を起こしやすいものになります。材木の仕入れ、製作過程での材料の選別を慎重に行います。

素材ー塗料

毒性のない天然素材の塗料、(拭き漆、オイルフィニッシュ、ソープフィニッシュ、柿渋)を使用しています。

  • 拭き漆  茶褐色のしっとりとした特有の艶が特徴。漆が希少であること、作業に手間が掛かるので高価になる。塗膜も強く高級品に使用されます。(詳しくはblogを参照ください
  • オイルフィニッシュ(クリア)  木材の持つ色と手触りをそのままき引き出します、と一般的に言われますが若干、黄色味を帯びます。味わいのあるいい経年変化が見られます。塗膜は中程度、水あとや汚れは放置しない限り残りません。
  • ソープフィニッシュ  オイルフィニッシュより本来の木材の色、手触りに近いです。無添加の石鹸を染み込ませ水や汚れが付きにくくします。塗膜はほぼありませんが、なによりその素朴さが魅力です。北欧家具の巨匠H ウェグナーの椅子等にも使用されました。
  • 柿渋  経年変化が大きい茶褐色、艶はあまりありません。若干の撥水性あり。消臭、抗菌効果があり、家具以外にも染物や建築にも使用され最近見直されている液体です。塗装して10日ほどですが柿渋の醗酵臭があります。

技法

古くから伝わる木工継手により組み上げます。近代の金具を利用するのを否定するのではなく木工継手は接合強度に優れ、またその作法は古くからあるのでこの業界に携わる職人たちにとっては一般的な技術であり今後も受け継がれていく技術であろうことから自分以外の職人が修理などの手入れすることになってもその作業が共通理解出来る、こういった理由から作業時間は要しますが木工継手を使うことが合理的と考えます。

 

 

作者経歴

 

中村大介 

熊本県人吉市出身

 

1976年 生まれ

1998 熊本県人吉市木工所勤務 

2002 ドイツ留学 デュッセルドルフとベルリンの家具製作所にて修業

2004 福岡県みやま市家具工房に勤務(7年間工場長として勤務)

2016 福岡県大川市家具工房 楪 設立